
配達を続けていると、原付に何かを付け足したくなります。大きめのリアボックス、明るいLED、寒い日のハンドルカバー、スマホホルダー、USB電源。ところが「どこまでが合法で、どこからが違反なのか」を条文で説明している記事はほとんどありません。ここでは配達員が実際に手を出しやすい後付け装備について、道路運送車両の保安基準と道路交通法、そして東京都の規則にあたって整理します。新宿駅前のレンタルバイク専門ウバレンが、配達で毎日走る前提でまとめました。
違反ラインは「車検の法律」と「走り方の法律」の2本立て
バイクの装備には、性格の違う2つの法律が同時にかかっています。ここを分けて考えるだけで、判断がかなりラクになります。
▶ 道路運送車両法(保安基準)=車両そのものの合格ライン
灯火の色、マフラーの騒音、ミラー、タイヤのはみ出しなど「車両がどう作られているか」を決めているのがこちら。国土交通省は不正改造を「自動車又はその部分の改造、装置の取り付け、取り外しその他これらに類似する行為のうち、それによって自動車が保安基準に適合しなくなるもの」と定義しています(国土交通省「不正改造の具体例」)。
▶ 道路交通法=そのバイクをどう使うか
荷物の積み方、ナンバーの見せ方、走行中のスマホ操作など「使い方」を決めているのがこちら。車両側が合法でも、積み方や使い方で違反になることがあります。配達員が実際に切符を切られやすいのは、じつはこちら側です。
同じバイクでも、法律によって「呼び名」が変わる
ここが多くの記事で混線しているポイントです。
- 道路運送車両法(保安基準の世界)…二輪で総排気量125cc以下はすべて「原動機付自転車」。うち50cc以下(二輪で最高出力4.0kW以下のものは125cc以下)が第一種、それ以外が第二種と決められています(道路運送車両法施行規則第1条)。
- 道路交通法(走り方の世界)…50cc以下と、いわゆる新基準原付が「原動機付自転車」。それを超える125ccは「普通自動二輪車」です。
新基準原付とは、警察庁の案内によれば「総排気量125cc以下の二輪車であって、最高出力が4.0キロワット以下のもの」で、令和7年4月1日から原付免許で運転できるようになったものを指します(警察庁「一般原動機付自転車の車両区分の見直しについて」)。つまり排気量が125ccでも、最高出力によって道路交通法上の扱いが変わるということ。これが次の章の積載制限に、そのまま効いてきます。
ネットで拾った「バイクの装備ルール」をそのまま自分の車両に当てはめると外すのは、この呼び名の違いが原因です。まずは自分が乗っている車両がどちらなのかを、標識交付証明書やレンタル契約書で確認してください。ウバレンの車両については車両一覧のページで確認できます。
配達員が一番引っかかるのは「積載制限」
大きなバッグやリアボックスを付ける前に、まず知っておきたいのが積める重さと大きさの上限です。数字は道路交通法施行令に書かれています。
重さは30kgと60kgで倍違う
- 原動機付自転車…積載装置を備えるものは30kgまで(道路交通法施行令第23条第2号)
- 普通自動二輪車・大型自動二輪車…乗車装置または積載装置を備えるものは60kgまで(同第22条第2号)
前の章で触れたとおり、新基準原付は道路交通法上は原動機付自転車です。排気量が125ccだからといって自動的に60kgではありません。普段のフード配達で30kgを超えることはまずありませんが、ドリンクのケース買いや大型スーパーの買い物代行のような案件では、意外と現実味のある数字になります。
なお、ウバレンでも扱っている屋根付きのジャイロキャノピー(ミニカー仕様)は、道路交通法上はミニカー=普通自動車の扱いです。この場合、積載装置を備えるものは90kgまでとされています(同第22条第2号)。同じ「50cc」でも仕様によって上限が変わるということです。
大きさとはみ出しの上限
大きさの制限は、原付も自動二輪もほぼ同じ書き方です。
- 長さ…積載装置の長さに0.3mを加えたものまで
- 幅…積載装置の幅に0.3mを加えたものまで
- 高さ…地上2mから積載をする場所の高さを引いたところまで
- はみ出し…積載装置の前後から0.3m、左右から0.15mを超えないこと
(道路交通法施行令第22条第3号・第4号、第23条第3号・第4号)
横に張り出すバッグは左右0.15mが目安、背の高いボックスは地上2mが天井、と覚えておくと現場で判断できます。あわせて道路交通法第71条第4号は、貨物の積載を確実に行う等、積載物の転落や飛散を防ぐため必要な措置を講じることを運転者の義務としています(落としてしまった場合に速やかに除去する義務は同第4号の2)。ベルト1本で固定して「たぶん大丈夫」で走るのは、法律上も想定されていない積み方です。バッグ自体の選び方はデリバリー向け配達バッグの選び方で詳しく書いています。
灯火のカスタムは「色」と「点滅回数」が決まっている
夜間の配達で被視認性を上げたい気持ちはよく分かりますが、灯火は色が法令で指定されています。まず国土交通省が不正改造の具体例として挙げている、道路運送車両法上の「自動車」(=126cc以上)の基準を見てみます。
- 尾灯…赤色(保安基準第37条)
- 制動灯(ブレーキランプ)…赤色(同第39条)
- 方向指示器(ウインカー)…橙色であり、点滅回数が毎分60回以上120回以下(同第41条)
- 番号灯…白色(同第36条)
- 後部反射器…赤色(同第38条)
(国土交通省「不正改造の具体例」)
125cc以下の車両については、保安基準のなかに原動機付自転車専用の条文が別に用意されています(前照灯=第62条、尾灯=第62条の3、方向指示器=第64条の3など)。条文の番号は違いますが、灯火についてはいずれも「灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するもの」でなければならないと定めており、色を自由に変えてよい車両区分は存在しません。市販のLEDに交換するなら、保安基準適合をうたっている製品を選び、球切れ警告や点滅速度が変わっていないかを必ず確認してください。
▶ 東京都では「紛らわしい灯火」も名指しで禁止
東京都道路交通規則第8条は、道路交通法第71条第6号にもとづく運転者の遵守事項を定めています。そのなかに、緊急自動車の警光灯と紛らわしい灯火を点灯してはならない(第13号)、みだりに作業灯を点灯してはならない(第12号)という項目があります。青白く光るフラッシュ系の装飾灯は、この規定に触れる可能性があります。
ナンバーの折り曲げ・カバーは、原付でもアウト
「原付のナンバーは市区町村が出しているものだから、角度の規制はない」という説明を見かけますが、少なくとも東京都内で走る限り、これは正しくありません。
東京都道路交通規則第8条第14号は、125cc以下の二輪車とミニカーについて「市町村(特別区を含む。)の条例で定めるところにより原動機付自転車等に取り付けることとされている標識及び当該標識に記載された番号を当該原動機付自転車等の後面に見やすいように表示すること」と定めています。さらに第15号では、番号標等に赤外線を吸収し、又は反射するための物を取り付け、又は付着させて運転しないことも禁じられています。
これは道路交通法第71条第6号の公安委員会遵守事項にあたり、違反すると同法第120条第1項の5万円以下の罰金の対象になります。折り曲げ、上向きの取り付け、スモークカバー、汚れたままの放置は、すべて「見やすいように表示」から遠ざかる行為です。
なお126cc以上のバイクは所管が変わり、道路運送車両法の世界でナンバープレートの表示方法が定められています。国土交通省によれば、平成28年4月1日から「カバー等で被覆すること、シール等を貼り付けること、汚れた状態とすること、回転させて表示すること、折り返すこと等」が明確に禁止されました。どちらの区分であっても、隠す・傾ける方向のカスタムに逃げ道はないと考えてください。
マフラー・ミラー・タイヤ、定番3点の落とし穴
マフラーは「音量」だけの問題ではない
保安基準は、内燃機関を原動機とする車両に「騒音の発生を有効に抑止することができるものとして、構造、騒音防止性能等に関し告示で定める基準に適合する消音器」を備えることを求めています(自動車は第30条、原動機付自転車は第64条の2)。国土交通省は消音器の切断・取り外しと基準不適合マフラーの装着を不正改造の具体例として挙げており、平成22年4月以降の製作車には別途、適用される基準があると注記しています。
交換用マフラーには、登録性能等確認機関が確認したことを示す「性能等確認済表示」の制度があります。社外品を検討するなら、この表示の有無を確認するのが最短の判断材料です。配達は同じ住宅街を1日に何往復もする仕事なので、音量は近隣トラブルにも直結します。
ミラーは「外す」も「ふさぐ」もNG
保安基準第65条は、一般原動機付自転車には後写鏡を備えなければならないと定めています(自動車は第44条)。取付位置や視野についても告示で基準が決まっているため、極端に小さい社外ミラーや、たたんだまま走る運用は避けたほうが無難です。
意外な盲点が東京都道路交通規則第8条第8号で、後写鏡の効用を妨げるように物を置いてはならないと定められています。ミラーのステーに袋を掛ける、ハンドル周りに荷物を吊るす、といった配達現場でよく見る光景は、この条文に引っかかる可能性があります。同条第3号でも、物を担ぐ・持つなど視野を妨げたり安定を失うおそれのある方法での運転が禁じられています。
タイヤ・ホイールの突出
国土交通省は、タイヤおよびホイールの車体(フェンダー)外へのはみ出しを不正改造の具体例に挙げ、「回転部分が突出する等他の交通の安全を妨げるおそれのあるものでないこと」(保安基準第18条)としています。この第18条は道路運送車両法上の「自動車」=126cc以上に向けた条文で、125cc以下の原動機付自転車の章には同じ趣旨の条文は置かれていません。とはいえ回転部分の突出は歩行者を巻き込む危険そのものなので、区分にかかわらず避けるべき改造です。インチアップや太いタイヤへの変更は、見た目が変わるぶん指摘も受けやすい部分です。空気圧や残り溝の管理は原付のタイヤ点検と空気圧管理にまとめています。
配達で本当に効く「合法の後付け」
ここまで禁止側の話が続いたので、実務で効く後付けも整理しておきます。いずれも視界と操作の邪魔をしないことが大前提です。
▶ スマホホルダー
配達に必須の装備ですが、道路交通法第71条第5号の5は、停止しているときを除き、走行中に画像表示用装置に表示された画像を注視することを禁じています。ホルダーを付けたこと自体は違反ではなく、走りながら見ることが違反です。ナビの確認は停止中に、が原則。取り付け位置はメーターとミラーの視界を遮らない高さを選んでください。
▶ リアボックス
雨天時に商品を守れて、盗難リスクも下げられる装備です。積載制限の範囲内であること、そして確実に固定されていることが条件になります。積みっぱなしにしないことも含めて、配達原付の盗難・いたずら対策もあわせて確認しておくと安心です。
▶ ハンドルカバー・グリップヒーター・風防
冬場の稼働率を大きく変える装備です。ただしハンドルカバーは手の出し入れが遅れる構造のものがあり、とっさのブレーキやウインカー操作を邪魔するようでは本末転倒になります。手を入れたまま指がレバーに届くか、必ず低速で試してから実戦投入してください。
▶ USB電源
スマホのバッテリー切れは配達員にとって収入の直撃です。電装品を増やすときはバッテリーの容量と発電量に余裕があるかを確認し、配線の取り回しはハンドル操作で引っ張られない経路にしてください。
いずれの装備も、交通ルールそのものの整理は原付配達の交通違反リスクと守るべき道交法ポイントとあわせて読むと全体像がつかめます。
レンタル車両は「まず相談」が正解
レンタルしている原付の場合、法令とは別にもうひとつの制約があります。車両は自分のものではないということです。
穴を開ける、ステーを溶接する、配線を切って割り込ませるといった作業は、返却時に原状回復を求められる原因になります。ネジ1本で外せるスマホホルダーと、車体に加工が必要なキャリアでは、話がまったく違います。返却時のチェックポイントはレンタルバイク返却時の注意点にまとめてあるので、装備を増やす前に一度目を通しておくと安心です。
ウバレンの車両はデリバリー配達を前提にした装備で貸し出しており、消耗品は当社負担、任意保険付きでお渡ししています。「このボックスを付けたい」「この配線をしたい」という相談は、作業する前にLINEでご連絡ください。合法かどうかと、契約上できるかどうかは別の話なので、先に確認したほうが結果的に早く済みます。
そして最後に、不正改造の重さについても触れておきます。国土交通省によれば、不正改造を行った者は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(道路運送車両法第99条の2、第108条)、使用者は整備命令に従わない場合に使用停止命令と50万円以下の罰金の対象になります。稼働を止められることが、配達員にとっては罰金以上の痛手です。